2009年11月26日木曜日

500色の色えんぴつに学ぶ、3つのアイデア

500色の色えんぴつ、って知ってますか?
通販会社のフェリシモが発売している色鉛筆です。
その名の通り500色あるのですが、
この500色の色の名前が2ちゃんでも話題になったようです。
「トワイライトゾーンの雪」とか「ため息のベール」とか
そんな名前がついています。
まあ要は、なんだそりゃ、と。

でもこの色鉛筆、かなり凄いと僕は思うのです。
そこで凄いと思ったアイデアを3つほどメモしてみます。

1.必要ないものを見定められた
まず最初にして最大のアイデアがこれです。
普通の色鉛筆でも、色には大抵、それぞれ名前がついています。
でも、その色の名前って実際使うのでしょうか?必要なのでしょうか?
恐らく自分で絵を描く時に、「色の名前」って特に必要無いんですよね。
「赤色だからこの色を使う」のではなく、「使いたい色が赤色だった」のです。
目で見て色を決めるのだから、そこに言葉が介在する余地は無い。
だったら無くしても問題は無いはず。
これに気付けたというのは、大きなポイントです。

2.空いた場所にストーリーを入れた
色の名前は必要無かったので、それが無くてもいいことは分かりました。
すると、この部分を「別の何か」に変えることが出来るはずです。
そこでフェリシモさんは空いた場所にストーリーを入れたわけですね。
これが2つ目のアイデア。
よく「ストーリーを売れ」とか「物語性が重要」なんて話がありますが、
この商品はこれでもかというくらい、それを素直に実践しています。
この色鉛筆のポイントがストーリーであることは、色鉛筆のコピーが
「500の色。500のなまえ。500のストーリー。」であることからも明らか。
つまりこれは「色の名前」という言い方をしてはいますが、
本当は「色の名前」では無いわけです。
主従は逆。売っているのは色鉛筆ではなく、色鉛筆の形をしたストーリー。

3.それを20か月に分割した
ストーリーが1本1本についた色鉛筆。
ここまでは完成しました。
普通であれば、これをそのまま一気に売ることも出来たはずです。
でもフェリシモさんはこれを25本ずつ、20カ月に分けて送るんですね。
これが3つ目のアイデアです。
今売ろうとしているのは、色鉛筆の形をしたストーリーです。
ただの色鉛筆なら全ての色が一気に使えた方がいいでしょうが、
ストーリーは一気に届けられても全部は読めません。
だから25のストーリーを20か月に分けて届ける。
これは1話完結型の連載小説に近いのではないでしょうか。
しかも1か月に25話ということは、平日に1話ずつ読んで丁度いい量です。
これが買ってから20カ月ずっと届くというのは、
ワクワクするし、お得感があります。


では最後に、3つのポイントをもう一度おさらいしてみます。

まず凄いのが、必要ないものを見定められたこと。
いま身の回りにある物の中にも、本当は必要のないものが無いでしょうか?
ここを変えることで、物事はよりシンプルになるのです。

2つ目に、ストーリーを入れたこと。
いま自分の売っているものに、ストーリーはあるでしょうか?
それは誰が、どんな思いで作ったものですか?
どこからどうやって来たものですか?
そのストーリーを商品の中心に置くことが出来ませんか?

最後に、全部を一気にではなく、少しずつ長く届けたこと。
もしその商品がユーザーに「小さな幸せ」を提供するものであるなら、
一気に全部、よりも少しずつ長くのほうがいいかもしれません。
分割して連続で届けることで、消費者のワクワク感を生み出せないでしょうか?

その辺りを考えると、いろんな商品に使えるのではないかと思いました。
というわけで、メモでした。

2009年11月16日月曜日

Freemiumを一過性のブームにしてはいけない

tadateruです。

Freemiumjpのキャンペーンを体験して思ったことだが、個人的にはまだ内容がAuthorizeされていない書籍が無料になったところで大して響かないと感じた。
自分にとっては書籍とは、知人や上司か本屋がすすめてくる時か、本当に知りたいと認識している内容が含まれていることがタイトルでハッキリと分かる時に初めて買ったり読んだりするものだった。

個人的な習慣はさておき、1万人限定キャンペーンはFremiumの正統なアプローチと呼べるかどうか疑問である。


◆freemiumjpに感じた違和感
私が最大のミスだと思うことは、NYのベンチャーキャピタリストFred Wilson氏の発見である「最初に無料で利用できるものは、いつも無料で利用できること」のルールを破っていることである。(
B3 Annex 「Free + Premium = Freemiumというビジネスモデル」) それを破るのはどういうことかというと、ただの時限DRMコンテンツにしかならないということだ。それだけでオリジナルのサービス・製品よりも著しく劣化している。期間限定で急かされたり、時間をかけて読む・後から参照するといった"利用の継続"にお金を払わなくてはいけなかったりするのは果たしてFreemiumと呼べるのだろうか。ただの「立ち読みで済ます行為」や、従来の無料サンプルモデルと変わらないのではないか。このキャンペーンにFreemiumのFree+Premiumという重要なアイデアのうちPremium的な要素は無い。
また、Freemiumjpの無料配布1万人突破はtwitterの話題伝播性によるもので、twitterの力を改めて示しただけである。一体1万人のうち何人が、DRMの締め切りまでに望ましい効用を得られるのだろうか。最後まで読める人や本書をフリー期間だけで活用できる人はそんなに多くはないだろう。
結果として、大勢の書評ブロガーに大量献本したつもりが、大勢の大して読みもしない話題に飛びついただけの人に配っただけになってしまっていないだろうか。


◆代金だけがコストじゃない。可処分○○を探せ
ところで、ふつうの人にとっては、新しいサービスや製品を試してみることも「コスト」だ。
自分自身の時間や意識を消費しなくてはならないし、どんなものも利用には新しい学習が必要だ。
「このサービスには特別な学習が必要ない」という評価でさえ、金銭的・時間的なコストを支払った上での利用と学習によってなされる。
「ふつうの人」と言ったが、どんな人でも人によって手持ちの資源比率が違い、どれを節約したいかが異なる。ある資源を出し渋る人に対しては、その資源のコストをゼロに近づけてやれば心理的な障壁が取り除かれやすい。
たとえば金銭コストをゼロにした時に飛びつく初期の導入者は、金銭資源を出し渋るとしても、新しいものを試す際の時間的資源やその他の心理的な資源は出し惜しみをしない。彼らは口コミや話題や評判を作るのに一役買い、時間的資源やその他の心理的資源を出し惜しみする後期導入者の資源を節約するわけだ。これはある意味では消費者側で起きている分業である。多くのWEBサービスでFreemiumが採用されているのは、限界費用がゼロな事に加えて、初期導入層のポジティブな評価に他の層の時間的/心理的資源節約の効果があるからだ。後期導入者は色々試している初期導入者のAuthorizationがあるから安心して利用を開始できるし、本当に価値のある製品/サービスだと分かれば初期導入者だろうと後期導入者だろうと出し渋らずに金を出す。
このメカニズムの対極に位置するのはブランド志向というやつで、金銭コストは大きいが、良いものを見つけられるまでの心理的資源や時間的資源をあらかじめ節約することができる。

Freemiumは価格が無料であることばかりに目がいきがちだが、逆に金銭以外のコストをはっきりと認識する必要性があることを我々に気付かせてくれるだろう。
さもなくば、「Freemiumを導入して無料にしてみたけど結局利益が上がらなかった。あれはダメだ」という、企業の担当者にありがちな失敗が増えるだけだ。
金銭以外のコスト/資源としてすぐに考えられるのは、時間のコスト/資源と、学習や努力のコスト/資源である。可処分所得、可処分時間はともかく、「可処分努力」という言葉が正しいかどうかは分からないが、どんな経済活動にもお金と時間と精神的なエネルギーが要る。
仮に、金銭、時間、努力の3種類のコスト/資源が重要なファクターだとするならば、2×2×2で、消費者をざっくり8層に分けることができる。たとえば時間もないし努力もしないけどお金だけはタップリ持ってる人、時間だけはあるけど努力もしないし金もない人…といった具合だ。8層それぞれの層の特徴や影響力の矢印の方向を見いだすことで、どの層にとってのトータルコストを下げることが最も効果的に全体のコストを節約させられるかという資源配分の問題を解くことができる。Freemiumはサービスの単価と影響力の方向とそれぞれの層の人数や人口分布が一定の時に有効な1つのパターンにすぎない。世代が変われば違う結果になる可能性がある。


◆なんだかんだ言ってもバズワードなんだから慎重に
そもそも、WebサービスにFreemiumが多く採用されはじめた理由は、誰かの手探りマネタイズによるまぐれ当たりを模倣しただけのものである場合や、利用者層が似ているからうまくいっているケースも多いはずだ。大元を辿れば、始めから課金したらユーザーからそっぽを向かれたという経験に基づく課金モデルであって、包括的な分析が伴っているものは実は少ないのではないかと察している。というか、基本的にはweb2.0の時と何も変わらず、WEB業界のマネタイズの慣習や流行にFreemiumと名前を付けただけである。
別にそれ自体は悪いことだとは思わないしネーミングは流行を増幅するが、ネーミングが独り歩きした結果、思わぬ落とし穴が待っているものだ。なんと言っても、クリス・アンダーソン公式のはずの日本初"Freemium"イベントがFreemiumの性質を備えていなかったことはあまり笑えない。

極端に聞こえるかもしれないが、Freemiumはジレットのカミソリのビジネスモデルやプリンタのインクで利益を稼ぐモデルと根本的には大して変わらないと考えてよい。
限界費用の低下とネットワーク効果により、無料会員でも維持し続けるメリットがデメリットを上回り、コストの比率と課金の機会をさらに極端に設定できるようになっただけである。


◆Freemiumの今後?
もちろんFreemiumは今後いっそう話題になっていくかもしれないし、WEBだけでなく実世界にもFreemiumの波がやってくるだろう。だがFreemiumを一過性のブームにしたり過度に期待しすぎたりしてはいけない。適切なマーケティングの手法と未知の有用なパラメータ収集の機会をみすみす逃すことになる。値段の高さや品質の悪さだけが購入の障壁ではないことは、良いものを作ったからといって売れるわけではないという経験が示している。一方でコストのようなネガティブな指標だけでなく、「楽しさ」や「自慢できること」など、従来無視されてきたポジティブな指標の重要性も明らかになってきているが、数値化しにくいためにまだ得体が知れないままである。長期的に見て重要なのは、個別のマーケットにおいて金銭以外のコスト/資源の関与度を明らかにすることである。



andvert君によるfreemiumの再掲記事に対するレスポンスとして。



2009年11月15日日曜日

書籍のデジタル化と自動翻訳で、出版市場が急拡大するという仮説

日本に向けたAmazon Kindleの発売、
対抗軸となるSONY ReaderB&Nのnookの発表など、
電子書籍/電子新聞の話題がにわかに盛り上がりを見せています。

またGoogleブック検索を巡っても様々な議論が行われ、
先月末に和解修正案に要請を提出した出版流通対策協議会を初めとして
日本の様々な団体・協会が声明を出しています。
更に欧州では既に対抗策としての書籍電子化を表明
日本でも国会図書館が電子のデジタル化に前向きな態度を見せました。

そして昨日、その流れに呼応するかのようにグーグルおよび和解関係者は
日本や欧州の出版物を除外するという旨の修正和解案を提出しました。
さて、これは日本側の勝利と言えるのでしょうか?
個人的には、少し疑問の残るところではあります。


そもそも、日本の人口は、世界から見て非常に小さいですから
書籍に限らず様々な生産物において、市場が小さいことは否めません。
それがもし、いろんな人が世界を相手に商売が出来るようになれば、
ものづくりや芸術、カルチャーを生み出すのが得意なこの国は、
もっと元気になるのではないかなんて安易に考えたりします。
例えば京都の職人が丹精込めて作った着物を、イタリアに住んでいる人に
その職人が直接売れたら、それは結構いい世界だな、と僕は思うのです。

インターネットの力を使えば、そういうことは可能になる気もします。
ただ、この記事でもちょっと触れたんですが、これには3つの壁があるのです。

1つは流通の壁
もう1つは通貨の壁
そして最後の1つが、言語の壁です。

実はこれらの壁を解消すべく、様々な企業がいま取り組みを行っています。

流通の壁は、実際に物販をしている会社にとって最も重要で難しい問題。
楽天市場は世界展開をするためにこの問題にいち早く取り組み、
楽天海外販売では、複数の商品をまとめて海外に送るサービスなども提供しています。

通貨の壁は、文字通り通貨が違うことにより決済が難しいという問題。
これは今年6月に資金決済法が可決したことにより、
PayPalを初めとした企業が日本でも展開し、解決される見込みがあります。

言語の壁は、購入ページや商品の言語が通じないことによる問題。
これはwebページを自動で翻訳してくれるGoogle翻訳のほか、
Facebookがクラウドソーシングによる翻訳機能を提供していたりもします。


さて、話を書籍に戻しましょう。

今まで、書籍を海外に販売する場合に大きなネックとなっていたのは
他の製品と変わらず「流通の壁」でした。
しかし、これがデジタル化することによって、インターネットで
データとして「配送」することが出来る為、事実上この壁が取り払われます。

また書籍などのコンテンツビジネスは、ことばそれ自体が商品であるため、
言語の壁の占める割合が大きくなってきます。
これまでは日本の本を海外で出版するためには
様々なプロセスを経なければならなかったでしょうが、
これもデジタル化で自動翻訳やクラウドソーシングでの翻訳が出来れば、
ボタン一つで海外に出版することも可能になるかもしれません。

もちろん、小説などの芸術としての書物であれば言葉にこだわるので
今の自動翻訳の精度では難しいでしょう。
しかしながらこれも、例えば出版社の中に翻訳者が居れば
海外の顧客に直接届けることは出来るようになるはずです。

書籍のデジタル化は、書物が誕生して以来の大きな変化だと言われます。
しかし個人的には、デジタル化の影響力が本当の意味で大きくなるのは
デジタル化と自動翻訳の両輪がうまく回り始めるその時だと思うのです。
必ずしもGoogleブック検索だけが回答であるとは思いませんが、
出版社は今回のブック検索関連の訴訟に片がついてからも
書籍のデジタル化について真剣に考える必要がありそうです。

2009年11月14日土曜日

これからのビジネスモデル、Freemium(フリーミアム)について考えてみる(再掲)

クリス・アンダーソンの『フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略』がとうとう日本語版で発売になります。
それに先立ち、昨日には本を紹介する特設サイトもオープン。
wired誌がFREEについての特集を組んだのが2008年の2月ですが、その頃からはてブで一人で「無料化」タグを付けて無料化について考え、日本での出版を待ち望んできた僕としては本当に嬉しい限りです。
個人的には、Freemiumを含む、無料化の波というのはこれからの時代において非常に重要になってくるであろうと感じています。
今回は出版記念ということで、以前一度書いたFreemiumの記事を再掲させて頂きます。

Freemiumモデルとは、Free+Premium、つまり無料版と付加価値の高い有料版を組み合わせたサービスモデルのことを指します。
この概念自体は2006年からあり、ベンチャー投資家のFred Wilsonが提唱したとのこと。
Wikipediaの説明を読むに、当時は広告モデルも含んでいたようですが、今は別のものとして語られることが多いように思います。
それが今、webでの無料モデルが壊れかかっている時期とアンダーソンが"Free"を出すタイミングが重なり、再注目されているという状況です。

ではこのFreemiumモデルは、これまでのビジネスモデルと比較するとどんなモデルに近いのでしょうか。
無料と有料という意味では、カミソリの柄の部分を無料で配り、替え刃の販売で後からコストを回収するというカミソリ型のビジネスモデルと比較して論じられることが多いようです。
実際、"Free"の予告編とも言えるWiredの特集でアンダーソンは、ジレット社の事例を皮切りに無料経済の話を始めています。
このモデルのキモは、一度カミソリの柄を買うとそれに合う同社の替え刃を買わなくてはいけない、というところにあります。
つまり、最初にハードが決定されてしまうことにより顧客を囲い込むことが出来、その後も継続的に収益が生み出されることになるのです。
他にも、コピー機やゲーム機、運用・メンテナンスで儲けるタイプのシステム開発やエレベーターなどがこのモデルに当てはまると言えるでしょう。

しかしFreemiumモデルは必ずしもハードにロックインされて後の収益が生まれるというわけではありません。
個人的にFreemiumは、『ザ・プロフィット』によるところの「製品ピラミッドモデル」の特殊なパターンとして理解した方が分かりやすい気がします。
製品ピラミッドモデルとは、ある製品カテゴリにおいて、一つの企業が顧客ごとに製品を分け、ピラミッドのように段階的なレベルを設定するモデルを言います。
ピラミッドの図を想像しても分かるように、最下層にあたる最も価格の低い製品が大量に販売され、頂上にあたる最も価格の高い製品は少量販売されます。
この時、最も利益を生み出すのは頂上にあたる高付加価値製品になります。
では、何故ピラミッドの底辺部分の製品が必要になるのでしょうか。
これを理解するため、まずは『ザ・プロフィット』より、製品ピラミッドモデルをバービー人形の例で解説した部分を抜き出します。

バービー人形は、20ドルとか30ドルとかで売られている。他社はこの低価格市場には簡単に参入できる。そこで必要なのが防火壁(ファイアウォール)だ。他社の追随を防ぐために、10ドルのバービー人形を売り出して廉価市場への他社の参入を封じ込める。ここではほとんど利益は上がらないが、他社が自社の顧客との関係を結ぶ道を塞ぐことはできる。それに、最初は10ドルの人形しか買わなかった顧客も、やがてはアクセサリーや他の人形が欲しくなるものだ。その部分ではそれなりの利益が上がる。 しかし、(バービーを販売している)マテルはさらに本当の意味での成功を収めるために、廉価市場とは対極的な方向にも目を向けた。そして、登場したのが100ドル、200ドルの市場だ。
重要なポイントはずばり「防火壁」。
他社が追随出来ないような廉価でエントリー製品を提供することにより、他社への参入障壁を高くすることが出来ます。
さらに付け加えると、廉価製品は顧客を集める役割も担っています。
廉価製品で集客し、かつ他社参入を防ぎつつ、高付加価値製品で利益を生み出すというのがこのモデルの特徴と言えるでしょう。
(この考え方は、フロントエンド商品/バックエンド商品という言い方もされるようです)
このモデルを利用しているのは、人形以外にも、自動車、腕時計、クレジットカード、最近ではiPodなんかが思い当たりますね。

Freemiumモデルの場合、上記の「他社の追随出来ないような廉価」が無料になっているというわけです。
ただの廉価よりも無料の方が顧客に対するインパクトは強いはずですから、通常の製品ピラミッドモデル以上に他社にとっての参入障壁が高くなります。
また、そのインパクトから、無料化は集客としても非常に強い手段です。
Googleが、他社が有料で提供しているようなサービスを無料で提供して話題を集めたのは記憶に新しいですよね。

このFreemiumモデルは、今や様々なwebサービスに採用されています。
その価格やFreemium Rate(提供された有料サービスに対する無料サービスの比率)が正しいかどうかは別として、Yahoo!、mixi、はてな等、国内の主要なwebサービスの多くがFreemiumモデルを採用していると言えます。
一時期「無料モデルは終わった」ということを言う人たちが居ましたが、僕はそうは思いません。
「とりあえず無料にしてみる」というブームは去りつつありますが、それは無料化が戦略として見直されているからこそです。

マスメディアのビジネスモデルが崩壊しかけている今、新聞社ではwebへの記事の無料提供をやめて有料化しようという声が上がっています。
しかし以前こちらのエントリでも書いたように、web上にはブロガーのように無料で文字を書く人が大勢居ます。
web上のコンテンツとしてこれと争うためには、有料と無料の丁度良いバランスを見極めなければなりません。
今後新聞社などの既存のメディア企業がいかにこのFreemiumモデルを使っていくかがポイントとなりそうです。

2009年11月8日日曜日

楽天がEdyを使って何をするか想像してみる

今週、楽天が電子マネー「Edy」を運営する
ビットワレットを子会社化するというニュースが出ました。

楽天、「Edy」のビットワレットを子会社化
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0911/05/news071.html

個人的には学生の頃から、ポイントと電子マネーと仮想通貨は
最終的に同じ方向を目指すと思っていたので、
楽天がポイントと電子マネーを両方持つ、
最初の会社になったことは結構驚きでした。

ここで、Edyを使って楽天が何をするのか、いくつか想像してみます。
ちなみに特に根拠は無いのであまり信じないでくださいw

ポイントと電子マネーの交換
はてブのコメント欄を見ても分かるように、これはユーザーからは要望が多いサービスでしょう。
ですが元々ポイントプログラムというのは単なる値引きとは全く違います。
ポイントを付与した人が次回も楽天経済圏内で買い物をしてくれ、
その次回の買い物の数%が楽天の利益になるからこそ意味があるわけで、
付与したポイントが経済圏外に流出してしまっては元も子もありません。

だからこそ前回の提携の際には「Edyと楽天ポイントが交換出来る」ではなく
「Edy購入時に楽天ポイントが貯まる」というサービスだったわけですが、
今回は資本提携ということで、ポイント交換の可能性もあるかもしれません。

ECナビのグループ会社のPeXという企業があるのですが、
この企業はポイントエクスチェンジのサービスを運営しています。
ポイント交換の際にはポイント同士でレートを付けることにより
別の企業とのポイント交換を成立させています。
これでPeXも利益が出るのですから、この方法を取れば不可能ではない気がします。

楽天上でのEdy決済
クレジットカードを持たない若年層や、
カードがあっても利用にまだ不安を覚えるユーザーにとっては
ネット通販はまだ敷居が高いと言えるでしょう。
Edyではパソリと呼ばれるPCに接続するEdyのリーダ/ライタがあるので
これで楽天上での決済をさせるというサービスは出来そうです。
若年層/高齢者層を取り込むことで新しい需要喚起は行えますね。

Edyによるweb上の少額決済
ここ数年、web上での少額決済の話をよく耳にします。
昨年から続く不況によって企業の広告費が削られ、
webサービスも、新聞社を含めたコンテンツ企業も
もう広告費だけでは儲からない状況にあるというのです。
実際今年の9月にはGoogleも新聞社に少額決済の提案をしています。

一方で決済の仕組みが元々あるモバイル市場は、
月々の継続的な課金でコンテンツを売ることが出来ています。
このことからもwebへの少額決済への期待は大きく、
資金決済法の成立とも相まってこの市場に参入する企業もいくつか出てくるでしょう。
この点でもEdyで決済が出来ると、ユーザーの利便性は高いと思います。

会員企業へのEdyへの導入
楽天には現在、31,456の店舗があるそうです(10月19日現在)。
店舗の多くはリアルでの店舗も持っているでしょうから、
ここにEdyを導入させることが出来れば、Edyとしての収益は上がるでしょう。
ただし、別の組織であったEdyの顧客獲得に対して
楽天の営業担当がどれだけモチベーションを持って売ることが出来るか。
この点は考えないといけないかもしれません。

Edyのリアル決済からのデータ収集とクロスセル
ここ数年、楽天では楽天のサービス全体を跨ったクロスセルに注力しています。
例えば楽天スーパーDBを使ったターゲティング広告は、
よりパーソナライズされた情報としての広告を打つことに成功しているようです。

これと同様に、リアル決済を行った際に楽天からのクロスセル提案をすることは可能でしょう。
例えばEdyを使ってあるバンドのCDを買った人には次の新作が出た時に楽天で予約するように促したり、
Edyで毎回同じミネラルウォーターを買っている人には
「楽天で箱買いすればもっと安いですよ」とメールすることが出来るかもしれません。
あるいはEdyで家電製品を買った人には「楽天で買うと最安値が●●円でした」なんてメールが来たら、
次回からはリアルでの買い物をする前に楽天で金額をチェックする癖がついちゃいそうです。

今後Edyがどうなるのか、注目していきたいところです。
何か面白いアイデアや想像があれば、是非教えてください。