2010年2月27日土曜日

これぞ未来!「第6感」という名の、見た景色をコンピュータのように扱える技術

Microsoftが作った、2019年のビジョンを示す動画を見たことがあるでしょうか。
デジタル/アナログ、ウェブ/リアルがシームレスにつながった、素晴らしいビジョンです。


個人的には「まだまだ実現されないだろうなあ」と思っていたのですが、
このほどTEDにて、紙をコンピュータのように扱ったり
情報をつまんで別のメディアに移したり、といった
上の動画のようなことが行える技術が発表されました。

それが、このSixth Senseです。
後半が圧巻なので、お忙しい方は4分50秒あたりからご欄下さい。
(「View Subtitles」より日本語訳ができます。)


プラナフ・ミストリー氏は、プロジェクタとカメラという単純な仕組みを
ウェアラブルにするだけでこれを実現してしまいました。
これはものすごいアイデアだと思います。
この方法は5年後には一つのスタンダードになっている可能性が高いのではないでしょうか。
見ているものをジェスチャーだけで情報として取り込める世界、非常に楽しみです。

2010年2月22日月曜日

「人間性」を企業が取り込む時に、twitterがなぜ役に立つのか?

一つ前の記事では、「ソーシャルメディアマーケティングは、人間性をもたらすマーケティングとして解釈すべきなのではないか」という内容を書かせて頂きました。
お陰様でtwitter経由でいろいろなリアクションを頂いたのですが、意外なことに批判意見は今のところほとんど無く、「似たようなことを考えていた」という方が多かったのが非常に印象的でした。
みんながなんとなく思っているけれど、「明確な根拠が無いから」とか「誰も言語化しないから」とかそういう理由で見過ごされがちなものって実は大事だと思っていて、その「みんながなんとなく思っている」っていうことそれ自体が時代の空気なんじゃないかとちょっと思ったりします。
さて、twitterでのレスポンスをしている中で、ひとつ書いておけば良かったと思ったことがあったので、簡単に追記。
それはタイトルにもある通り、「「人間性」を企業が取り込む時に、twitterがなぜ役に立つのか」ということです。

前のエントリで書いたように、「これからは企業でも人間性が重視される」と個人的には思っているのですが、じゃあソーシャルメディアはその手法として本当に有効なのでしょうか?
また、人間性という観点で見た場合には上記エントリで示した他のマーケティング手法と比べて、どのような点で有効なのでしょうか?
ここでは現在注目されているtwitterが一つの答えとなっているように感じたので、これを例に話を進めます。

そもそも、これまでマスプロダクトを提供するような大企業が人間性を保つことが出来なかったのは何故でしょうか。
これは前エントリにも書きましたが、企業が効率性を求めた結果であるのではないかと感じます。
人間性を出そうとすると、個人個人で対応を変えなければならないため、効率が保てなくなっていたのです。
故に企業は、マスメディアを使って一つのメッセージを大量の消費者に均一に届けることで、コミュニケーションをスケールさせていました。

ではこれが仮に、効率性と人間性の双方が両立出来るとすればどうでしょうか。
そのような方法、あるいは装置があれば、大企業でも人間性を保つマーケティング・コミュニケーションを行うことは可能であるように思います。

勿論これまででも、メールによって一人一人対応することで、デジタルでも人間性を出したコミュニケーションを行うことは可能でした。
メールマーケティングが提唱されて以来、今では多くの企業がメールを使って消費者とコミュニケーションを取っています。
しかしこの場合、メール1回のコミュニケーションで発揮される人間性は、メールの相手である1人にしか伝わりませんでした。

twitterをしている人同士のコミュニケーションではよくある例ですが、これまでメールでしていたようなやり取りを、お互いに@リプライを介してタイムライン上で行うことがあります。
場合によっては、そのやり取りを見ていた観客が会話に混じり、いつの間にか3人で会話していた、という経験がある方も多いのではないでしょうか。

企業と消費者がtwitterを使って会話する際にも全く同じことが当てはまります。
@リプライを使った、企業とある消費者との1to1のコミュニケーションはそのfollowerたちに対しても見えますから、そのレスポンスが優しく丁寧なものであれば、その人間性はほかの人達にも伝わることになります。
つまり企業がtwitterを使うことにより、1to1のコミュニケーションをスケールさせることが可能になるのです。
メールのような、閉じた1to1はそれ以上のものには成り得ません。1+1は2にしかならないのです。
しかしtwitterは、オープンな1to1を行い、これに観客が付くことで1+1が100にも1000にもなる可能性を持っています。

これがtwitterを使うことで得られる大きなメリットの一つだと思うのです。

ちなみに余談にはなりますが、効率性と人間性のバランスをうまく取るやり方は他にもあると思っていて、一つは企業の仕組みの中に人間性を組み込む、というやり方です。
例えば、いま話題になっている本に『ザッポスの奇跡』という本があります。
これは、米Amazonが買収した靴のEコマース“ザッポス”が成功した理由を、その企業文化とそこから生まれるサービスに求めて論じた本でした。
同様に日本企業では、過剰とも思えるくらい親切心に溢れた修理サービスをする任天堂が、「神対応」と呼ばれ話題となるような例もあります。

この企業における人間性の強化、というのは今後一つのテーマと成り得るのではないかと感じております。
僕もまだ全然答えは出ていないので、何かご意見や思うところある方いらっしゃれば、コメント欄やtwitterでお気軽に話しかけて下さると嬉しいです。

2010年2月20日土曜日

企業の「人間性」という観点から、ソーシャルメディアマーケティングを解釈してみる

今週の月曜日に「ソーシャルメディアマーケティング研究会」という、小さな勉強会が開催されました。
この会を主催しているのが@Ihayatoことイケダハヤトさん。
彼はお若いながらもソーシャルメディア領域に大変詳しく、そのブログで書かれる海外事情や考え方にいつも学ばせて頂いています。
僕も最近仲良くさせて頂いておりこの会にも出席したのですが、イケダさんも書いているように、会の中で「ソーシャルメディアマーケティングとは何か」という根本的な問いが話題に上りました。
僕もこれについては常々考えていたので、今回は僕の考えるソーシャルメディアマーケティングについて、簡単に書きたいと思います。

話は、戦後の復興期・高度経済成長期のころに戻ります。
この頃、人々が願うのは貧しさから抜け出すことでした。
消費者にとっては、物を買って生活が豊かになることが幸せでした。
だから、企業が物を売って人を豊かにすることは、そのこと自体が社会貢献だったと思うのです。
この頃以前に作られた企業はその理念も、自社の商品を売って広めることで社会を豊かにする、というものが多い気がします。

それが70年代、80年代になってくると人々が物を持っているのは当たり前になってきます。
そんな中で企業が物を売るためにはより良いものを作らなくてはなりません。
そしてそれが今までのものより、或いは他社のものより良いことを示すためにマス広告が活躍しました。
広告は企業の武器として活躍しましたが、その反面、一方的な企業のメッセージだけが押し出され、消費者の慣れとともに邪魔な存在へと成り下がってゆきます。

また効率性と収益性を追い求める中で、企業はいつからか人間味を失ってゆきました。
例えば何か失敗があっても自分の言葉で謝ることはせず、原稿に書かれた「遺憾に思います」という言葉とともにカメラに対して頭を下げるだけ。
このように「企業」という存在が消費者からだんだんと遠くなっていったのだと思うのです。

以上の流れの中で、人々が企業に対してまず「信用しない」という姿勢で接するようになっているのが現代なのではないでしょうか。
元々は社会に貢献するために生まれたはずの企業ですが、この事がいろいろなところに綻びを生み出しているように思います。
例えば数年前からCSRが流行しているのは、戦後とは違い、企業が消費者にものを売ることが「社会貢献」にならなくなったからであると言えるでしょう。
「社会起業」や「ソーシャルビジネス」という言葉がしきりに叫ばれるのも同じ理由だと思います。
またボランティアや寄付が最近また注目されるようになったり、「プロボノ」という概念が出てきたのは、働く側(雇用者・従業員)としても、社会に貢献しないような働き方が個人の充足感を満たせなくなっているからではないでしょうか。

そしてその波は、当然マーケティングにも押し寄せました。
近年、1to1マーケティング、パーミションマーケティング、アドボカシーマーケティング、コーズマーケティングなど、数々のマーケティング手法が輸入されています。
僕は、これらの背後に流れる考えは、みな共通しているのではないかと思うのです。
それが、人間らしさ、あるいはHumanityです。
きっとマーケティングの分野においても、企業がもっと人間味を取り戻し、消費者に対してもひとりの人間として接することが求められているのです。

例えば、チラシで「10%OFF」と書かれて200円引きになったものと、大阪のお土産屋さんでオバチャンが「お兄ちゃん頑張ってるからまけてあげるよ」と言われて引かれた200円だったらどちらが嬉しいか、どちらが心に残るかということだと思うのです。
これは間違いなく後者でしょう。
自分のことを一人の人間として扱ってくれた時の方が、「マス」を対象として均等に扱われた時よりも心に残るのは明らかです。
ちなみに前述の大阪の話は僕が学生の頃の実話で、この時同じ「値引き」や「おまけ」であっても消費者に与えるイメージはまるで変わってくるのだと感動したことを覚えています。
これが出来るか出来ないかは、顧客をリピートさせるという視点でも非常に重要です。
よく既存顧客を維持する方が、新規顧客を獲得するよりも難しいという話がありますが、その為には企業に対して信頼性を持ってもらう必要があるわけです。


僕は、以上のような文脈でソーシャルメディアマーケティングも解釈すべきであると思っています。
ソーシャルメディアを使ったマーケティングは「対話」や「関係性づくり」が目的だという話をよく聞きます(勿論そう考えない方も居ます)。
しかしこの「対話」や「関係性」のコアとなる部分は、「企業は信用しない」と殻に閉じこもっている消費者の殻を破り、「消費者に信用してもらうこと」なのではないでしょうか。
人と人とがつながるソーシャルメディアが、人と企業をつなぐ為にも使われる、というのは非常に納得感があります。

ソーシャルメディアの中でも現在注目されているtwitterでは、事例が増えるにつれて、botなどを使うのではなく担当者が一人の人間として呟く、という使い方が増えてきているように思います。
中でもフランクに消費者と会話するような企業アカウントを、これまでのお硬い企業の公式(硬式)アカウントに対して、一部では「軟式アカウント」と呼ばれ始めています。
これはすぐに売上に繋がるかと言えばほとんどの場合そうではありません。
まさに、「消費者に信用してもらうこと」を目的としてtwitterを活用している事例です。
軟式アカウントの柔軟な人間性は、非常に興味深く、可能性がある気が個人的にはするのです。

確かに現段階では、大企業の中でソーシャルメディアを使っていくためには、これまで示したような「人間性」などという曖昧な理由では難しいかもしれません。
売上目標などの明確な理由が無ければ、会社としての許可が下しにくいという意見もあるでしょう。
また「ソーシャルメディア」という定義もまだ人によって違ったり、使うサービスによっても戦略が全く変わるなど、理解しにくい側面があることも否めません。
しかしそれでも、ソーシャルメディアの利用を検討する最には、そんな企業の人間性の部分を考えてみてもいいんじゃないかと思うのです。
いまソーシャルメディアの利用を検討している方には、是非そんなことも考えて、より人間らしい方法でソーシャルメディアを利用して頂けることを願っています。

2/22追記
「人間性」を企業が取り込む時に、twitterがなぜ役に立つのかを別エントリで追記しました。

2010年2月13日土曜日

文化庁メディア芸術祭のBraun Tube Jazz Bandがモノ凄い。

休日の木曜日に行って参りました、文化庁メディア芸術祭。
今年も面白かったです。
その中で、個人的に断トツで面白いと思った作品がありました。
是非いろんな人に見に行ってほしいので、紹介します。
それが、Braun Tube Jazz Band

Braun Tube Jazz Bandは「Band」という名前からも分かるように、
演奏することで完結するインスタレーションです。
ただ、この時に演奏する「楽器」が非常に面白いのです。
楽器は、以下のようにブラウン管テレビを並べて構成されています。



演奏に使用するのが、真ん中にある8つのテレビ受像機。
これらの画面を叩くことで様々な音を出し、ティンパニやドラムのように音を奏でます。



ブラウン管テレビの画面を叩いて何故音が出るのか。
その仕組みこそが、Braun Tube Jazz Bandの最たる特徴となっています。

仕組みはまず、音階やドラムの音を音源として、サウンド出力します。
これをブラウン管テレビの映像端子に入力。
すると、テレビにいわゆる砂嵐のような、白と黒の模様が浮かびます。
これが録音された音をそのまま映像化したものとのことです。
演奏者はギターアンプに繋がれたシールドを身体に直接触れさせた状態で
テレビの画面に触れることで、映像信号を身体を通して再度音声信号に戻します。
この音がアンプから出ることで演奏が成立するようになっているのです。
(説明があまりうまく出来ないので、詳細は作者である和田永さんのオフィシャルブログでどうぞ。)

実はこの和田さんは、昨年もOpen Reel Ensembleという作品で受賞をされています。
こちらは昔ながらのオープンリールを用いて、DJさながら
回転を制御・調節することで音楽を奏でるというものでした。

しかし、個人的には今年のBraun Tube Jazz Bandの方が好きです。
打楽器やティンパニを演奏する様子が頭の中に既に思い描ける僕たちは
「ブラウン管テレビを叩いて音を出す」という非常に似た動きで
有り得ないことが起こっているそのギャップに驚きを感じます。
この身体性にこそ、作品の面白さがあるのではないかと僕は思います。
Open Reel Ensembleの場合は頭で考えて「なるほど、凄い」という感じでしたが
Braun Tube Jazz Bandは見た瞬間に直感的に「すげー!!!」という感じでした。

もう、読んでいる人は途中から何言ってるか分からないと思いますが
是非足を運んで、観に行って、聴いてみて下さい。
びっくりすること請け合いですから。
文化庁メディア芸術祭は、明日14日まで国立新美術館にて開催中です。