2009年9月13日日曜日

コピーと共有が当たり前の時代にコンテンツでお金を取るヒント

ITproに、アメリカの映像配信サービスの話題が出ていました。

Silverlightベースの「DVD並み」映像配信サービスを英国で開始へ
この記事で注目したいのは以下の部分です。
Tesco店舗のビデオ・タイトル購入者向けサービスとして,「仮想DVD」をダウンロード提供する。パソコンでDVD並みの画質で映像を再生できるうえ,Webコンテンツのようなインタラクティブ操作も可能という。
実際にDVDを購入した人だけがwebから映像を視聴し、それ以外のコンテンツも楽しむことが出来る。
コピーと共有が当たり前の時代に、このようなコンテンツ提供は一つの答えとなるのではないでしょうか。

もう一つ、直近で見た例があります。
最近、『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう』という本を会社から支給されました。
この本は、体系化された34の強みの中から自分が強みとする5つを見つけ出しそれを活かす、という内容なのですが、この本の一番の価値は本それ自体にあるわけではありません。
一冊一冊の表紙カバーの裏に固有の番号があり、これを入力することでweb上でテストが受けられるようになっているのです。
もちろん同じ番号では2回テストは出来ない仕組みです。
こういう仕組みにすることにより、コピーは役立たなくなり、一人一冊ずつ本を購入しなければならなくなります。
実際会社では、本は読まなくてもwebテストのみ受けるという名目で、数十冊単位で購入がされました。

また、同様のアイデアでは以下のようなものも考えられるでしょう。
  • 本を買うと、web上で本の内容を閲覧することが出来、ケータイで見たり、検索やコピー&ペーストが出来る
  • CDを買うと、ケータイから同じ曲の着メロも使える
これらは、コンテンツの内容は同じであるものを、見せ方や提供の仕方を変えることにより、別の価値を生み出していることが分かります。
そもそものコンテンツ自体は同じものですから、制作のコストはそこまでかからないはずです。
このように、リアルで何かを購入した際に固有の番号で認識をしwebサービスを提供する、という提供方法は、個人的には一つのスタンダードになり得る気がします。

似たような例で、元々無料のコンテンツを有料で売ることも考えられるでしょう。
NHKが皆既日食の映像をYouTubeで公開したときのことを覚えていらっしゃる方も多いかと思います。
この時、はてブのコメント欄には、YouTubeで公開するという決断を賞賛する声とともに、こんな意見が見られました。
id:T-3don 欲を言うと、何所でも見られる(?)太陽ではなくもっと景色の方を映して欲しかった。
id:kno 周りの景色が半端無く綺麗だった
id:shibashuji 陽も素晴らしいが、水平線360度が明るくて自分の周りだけ暗いなんて、すごすぎる!別撮りした映像があれば是非じっくり見せて欲しい。
id:winter_katze 太陽も良いけど周りの風景をもっと。
id:umakoya すごい・・・。もうちょっと、引いた画を見せてくれ。
id:KOROPPY 太陽の変化はもちろん、周りの風景の変化も幻想的。
総じて、日食中の周りの風景の映像も見てみたい、という意見がとても多かったのです。
この時彼らのコメントを見ながら僕が思ったのは、YouTubeの映像は無料のままで、周りの風景の映像を有料にすればよいのではないかということでした。
途中で映像が切り替わっているということは、カメラは元々2台あって映像は用意出来ているはずですし、これは公開しなければ無駄になるはずの映像だと思います。
コンテンツとしては「皆既日食の瞬間を撮っている映像」ですから、撮り直しなどすることも無く、今ある資源をお金に換えることが出来ます。
テレビにて流した映像がそのまま宣伝となり、別カメラの魅力的な映像をweb上にて有料で提供、というのも考えられるのではないでしょうか。

コンテンツのコピーと共有が当たり前となってしまい、これからの時代、コンテンツをパッケージメディアで売るのはより難しくなるばかりかと思います。
今後はこのように、webコンテンツを提供する代わりにリアルで物を買って貰ったり、無料であったコンテンツの見えない部分をwebで有料提供したり、というのはコンテンツビジネスの新しい形と言えるのではないでしょうか。
僕はwebが大好きで、コピーや共有という思想も個人的には好きではありますが、世の中から優良なコンテンツが無くなってしまうのは悲しいと思っています。
コンテンツでお金儲けをする人たちは、いかに今の時代・今のユーザーに即した方法でコンテンツを買ってもらうかということを、もう一度考えてみてもいいのではないでしょうか。

※参考程度ですが、こちらの記事はこれからの時代必読だと思います。
無料より優れたもの(Better Than Free)
http://memo7.sblo.jp/article/12121626.html

2009年9月3日木曜日

webという四次元ポケットから、次はどんなひみつ道具が飛び出すのだろう。

本日9月3日はドラえもんの誕生日だそうで、Googleのホリデーロゴがドラえもん仕様になっていました。


インターネットはどこでもドアだ」というのはちょくちょく聞くのですが、僕にはなんとなくそれが腑に落ちません。
どちらかと言うと、webはどこでもドアよりも四次元ポケットに近いと思うのです。
せっかくのドラえもんの誕生日なので、今日はそんなお話をします。

どこでもドアは、今いる所から一瞬で行きたい場所に行けるので、要は空間を縮める役割を持った道具です。
対して四次元ポケットは、中に無限にものを入れることが出来ます(細かい設定は分からないですが)。
つまり空間が無限に存在していると言える。
紙のコンテンツとwebコンテンツの比較でも本屋とAmazonの比較でもいいのですが、webも同様に無限の広がりを持っています。
そしてその四次元ポケットの中には、生活を便利にする様々なひみつ道具(webサービス)が潜んでいるのです。

また四次元ポケットには、それと全く同じように使えるスペアが存在しています。
誰が、どこに居ても、スペアポケットさえ持っていれば四次元ポケットの中にあるものを取り出して使えるわけです。
PCやケータイというネットに繋がったデバイスは、正にこの役割を担っていると言えないでしょうか。
現在はみんながスペアポケットを持って、一つの四次元ポケットを共有している状態なのです。
つい最近まで、サービスがどこに居ても提供される様を、空に広がる雲に例えた「Cloud Computing」という言葉が流行っていましたが、僕には四次元ポケットをメタファーとした方が日本人には断然分かりやすい気がします。


では、webが四次元ポケットだとすれば、最初に出てきたどこでもドアは何になるのでしょう。
どこでもドアは、自分が今行きたいと思う場所に一瞬で行けるというひみつ道具です。
webサービスの中で自分が行きたいと思う場所に一瞬で行けるものは何でしょうか。
僕はそれが、検索エンジンなのではないかと思うのです。
特にGoogleの「I'm feeling lucky」には非常に近しいものを感じます。

ここで一つ疑問に思うことがあります。
ドラえもんの話の中で、どこでもドアに並んでよく出てくる道具、タケコプターについてです。
どこでもドアが「行きたいと思う場所に一瞬で行ける」ならば、何故この2つの道具が共存しているのでしょうか。
どこでもドアさえあれば、任意の場所まで飛んでいかなければならないタケコプターは必要ない気がしてしまいます。
微かな記憶を頼りにドラえもんの作中でどこでもドアとタケコプターがどのように使い分けをされていたかを思い出してみると、確か「のび太の居場所が分からないけど探すとき」や「初めて行った場所を探検するとき」、或いは「飛ぶこと自体を楽しむとき」だったような気がします。
つまり
  1. 目的地は分からないまま、自分の周辺から手当たり次第に探すとき
  2. 探すという目的はなく、その時間の過ごし方自体を楽しむとき
なんかは、検索よりも良い方法があるのかもしれません。
「検索ワードは思い浮かばないけど探し物をしたい」「単純に暇つぶしをして楽しみたい」というニーズは確かにありますよね。
タケコプターをwebに落とし込んだら流行るかもしれないなあ・・・。


というようなことが、学生の頃のネタ帳に書いてありました。
そんなことを考えてから2年ほど経ち、いまwebサービスの世界には新たな波がやってきています。
twitterやFacebookなどのソーシャル系のサービスは正に上記のような使い方をされているのではないでしょうか。
ここまで近いと、藤子・F・不二雄氏はwebの誕生を予見していたのではないかなんて邪推もしたくなります。
そう言えばアンキパンとか翻訳コンニャクなんかも既にwebサービスとして生まれてきていますよね。
まだまだこれからも、webという四次元ポケットからは面白いひみつ道具が生まれて来そうな気がしました。
                                     ≫続きを読む