2010年6月19日土曜日

話題のGroupon(グルーポン)から、webでのプライシングについて考えてみる。

Groupon(グルーポン)という名前のサービスが話題になっています。
先月はけんすうさんが海外のwebサービスを紹介するエントリで取り上げていたり、looops斉藤さんが分析のエントリを上げていたりと、各所で注目を浴びている様子。日本でもいくつか類似のサービスが生まれています。

Grouponの成功要因、という意味ではフラッシュマーケティングの要素にあることは間違いないと思います。
ただ一方で個人的に注目したいのは実は「人を集めると割引きになる」という共同購入の要素だったりします。
以前から、僕はwebだとある条件で価格を変動させるような仕組みができそうだよなーと思っていました。
そこで今回は、共同購入を始めとした、webでのプライシング(価格付け)の可能性について考えてみたいと思います。(あくまで可能性なので、実現性についていろいろあると思いますが、お許し下さいませ!)

Grouponなどの共同購入は、ざっくり言えば「みんなで買うと安くなる」という仕組みですね。
この仕組み自体は何も新しいものではなく、インターネットが発達する前から、生協のような形で生活の中に取り入れられてきました。
そもそもみんなで買うと安く出来るのは、販売単価を多少下げても販売個数を増やせれば利益(の額)が増えるから可能になっているわけです。
逆から見ると、価格を下げることで需要を増やす仕組みだということが出来るかと思います。

販売個数が増えることが確約されれば、販売単価を下げられる。
これは必ずしも共同購入でなくてもうまく行きそうです。
すぐに思いつくのは、期間購入。
ある商品をずっと購入し続けるような契約を結べれば、1回の価格は下げられそうですね。
例えば洗剤や醤油やペットフードなど、ある一定の期間で無くなってしまうような商品は、1ヶ月に1回自動的に送られてきてもいいかもしれません。
牛乳の配達なんかは実際ありますし。
新聞や雑誌の定期購読も(毎回全く同じものを買っているわけではないですが)似たような仕組みだと考えられます。
こう考えると、共同購入だけでなく、期間購入モデルのwebサービスやASPも今後出てきそうな気がします。


では、これらをwebでやることの利点って何でしょうか?
もちろん答えは人によって様々でしょうが、ひとつはユーザーの行動が分かることだと僕は思います。

webでは、どこがクリックされただとか、何がどれ位購入されただとか、AとBでどちらを選ぶ人が多かっただとか、そういうユーザーの行動が全部データとして蓄積されます。
だからもし「ある商品を何人のユーザーが欲しいと思っているか」をデータとして取ることが出来れば、その商品の需要の予測が立てられるはずです。
実際、Amazonでの予約注文の数値も書籍の需要予測として出版社が使っていると聞いたことがあります。
この面から見れば、Grouponも何人が欲しいと思っているかをトラッキングし、その人数がある一定の値を超えた時に価格を変えて提供するサービスだということができそうです。

更にこの考えを推し進めれば、人数(需要)と価格のレンジをもっと細かくすることも出来そうです。
つまりある物に対して500円であれば欲しい人、1000円であれば欲しい人、1500円であれば・・・といくつかのレベルを設けて人を集めるわけです。
これを長期的に続けていけば「どれ位の価格設定をした時にどれ位の需要になるか」というデータが蓄積されます。
そのデータがあれば需要と価格の関連性が数値として見えるので、ある商品を売るときに最も利益の大きくなるような価格付けをすることも可能なのではないでしょうか。
このように、需要によって価格を変動させることが出来るのはwebの大きな強みの一つであり、今後このような仕組みは増えていくんじゃないかと思っています。
(書きながら思ったのですが、もしかしたら僕が知らないだけで、こういう機能を実装したASPとかはあるのかもしれません)


さて、ここまでは需要によって価格を変える方法として「価格を下げることで需要を伸ばし、利益を最大化する仕組み」について考えてきました。
でもこれだと利益を最大化出来ない場合があります。
それは、充分な在庫が無かったり、商品が一点モノだったりする場合です。
この場合はどうしたら利益を最大化出来るでしょうか。

今度は商品点数が限られているため、無闇に「需要を伸ばす」ことが出来ません。
とすると、利益を最大化するには「価格を上げる」ことになります。
商品点数が限られている状況で、動的に価格を上げて行く、そんなモデルがあればいいんですね。
お気づきの方も居ると思いますが、これは競り・オークションということになります。
webの世界ではYahoo!オークションなどのオークションによって日本では馴染みの無かったC2Cの取引が活性化したのはご存知の通りです。
また、僕が仕事でやっているリスティング広告なんかも、掲載順位は基本的にオークションで決まります。
やはりこちらの場合でも、webで価格を動的に調整するという方法は有益なようです。

では、まとめです。
供給が需要を上回っている場合→価格を下げて需要を高めていくモデル・・・共同購入や期間購入
需要が供給を上回っている場合→需要の高さによって価格を上げていくモデル・・・オークション
ということになります。
ポイントは、どちらも実際の取引が行われる前にユーザーの「欲しい」という欲求を集めて価格を調整する点です。
webでは今後、きっとこのようなモデルが増えて行くと思っています。
するとweb上の様々なものの価格が動的に変わるようになっていくのではないでしょうか。

随分前の話になりますが、音楽配信のAmie Streetや、最近だと電子書籍のNew Liberal Artsなんかは、コンテンツビジネスにおいて変動価格を実験している良い例と言えそうです。
価格に対してのwebからのアプローチは今後熱くなる分野だと個人的には思っています。
変動価格が当たり前になった時に、リアルなお店がどうなるかを想像するのも面白そうですね。

追記:
下記のTechWaveの記事で、湯川さんがイベントの成功法として、価格にレンジを設けて参加人数を集め、その参加人数を見ながら会場を決めて最後に価格を決定する、という方法を紹介されています。
やはりwebではこの方法は都合が良いようです。
リスクなくイベントを開催する方法 : TechWave

2 件のコメント:

  1. はじめまして。
    興味深く読ませて頂きました。
    けっこう、アカデミックな感覚が通用しないことも多いのですが、ロジックに立ち返ることも大事だなと思いました。

    ちなみに84です。
    では。

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  2. 谷口優さん

    コメント有難うございます!
    仰る通り、エントリの考え方どおりに動かしても実際にはうまくいかないですよね、すみません。
    価格付けも安ければ安いほどみんな購入するってもんでもないと思いますし。
    思考実験的なものだと思って頂ければ幸いです。

    84なんですね!
    リンク先から想像するにPikuの中の方なんでしょうか?
    いずれ色々お話出来れば嬉しく思います。
    また、是非覗きに来て下さい!

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