2009年12月31日木曜日

コロプラとラブプラスに共通する、新しい時代のマーケティング手法(前編)

以前僕はこのブログで、「コピーと共有が当たり前の時代にコンテンツでお金を取るヒント」というエントリを書きました。
これは、本やDVDなど、コンテンツのパッケージメディアを購入した際に
同じ内容のデジタルコンテンツを提供すれば良い、という提案でした。
ざっくり言えば物(アトム)を買った時のおまけとして、
無料のデジタルコンテンツ(ビット)を付ける、ということです。

実際、以前エニグモがローンチした「コルシカ」(現在は著作権関連の問題で停止中)や、
先日「ウェブ新聞を創刊する」旨を発表した北日本新聞社でも
雑誌を購入した人にデジタルデータを提供したり、
新聞を契約した人にウェブ新聞を提供したりと
同様のモデルを用いてコンテンツを提供しようとしています。

今の時代、デジタルデータの扱いやすさに慣れてしまったユーザーは
物としてのパッケージだけではニーズを満たすことは難しいように思います。
今後は物とデジタルを同時に提供することで、物の良さとデジタルの良さ、
その双方をユーザーに対して提供することが出来るのではないでしょうか。

最近、このアトムとビットを組み合わせるという手法は
コンテンツビジネスだけでなく、実際に物を販売する際にも
有効なのではないかと考えるようになりました。
今回はこれらを「アトム財」と「ビット財」と呼び、
幾つかの事例を見ながら新しいマーケティングについて考えてみたいと思います。

事例1:コロニーな生活PLUS
コロニーな生活PLUS」は、通称コロプラと呼ばれる
位置情報を利用したオンラインゲームです。
コロプラではアイテムを集めたりして遊ぶのですが、
その中には実際にその土地に行き、提携先の商品を買った時のみ
ゲーム内でももらえる、限定のお土産アイテムがあります。
仕組みとしては商品を買った際にコロカ(写真)と呼ばれるカードが貰え、
その裏に書いてあるパスワードをゲームで入力することで
ゲーム内で限定アイテムを購入することが出来るとのこと。



実店舗との連動はカードを使わない位置情報連動の形で今年3月に実験
コロカによる連動を今年の6月に開始、その後提携先の店舗を増やしながら
現在では全国29の店舗で提供をしています。
その中にはコロカによって来客数が跳ね上がった店舗も多く、
事例が日経ビジネスオンラインでも取り上げられました。

また、注目したいのはそのビジネスモデルで、これは広告のように
コロプラが店舗から先にお金を取るのではなく、
コロカの配布枚数から、実際に売れた分を把握し
その金額の15~20%を取っているということが特徴です。
システム開発やお土産のデザイン、コロカの印刷代等を考えると
これはかなり良心的なビジネスと言えるのではないでしょうか。
(コロカの仕組みについてはここギコ!さんが詳しく書いていらっしゃいます)

事例2:Merry +'mas
コロプラと非常に近い例が、今年のクリスマスに実施されました。
それがMerry +'mas(メリープラスマス)キャンペーンです。
これは恋愛ゲーム「ラブプラス」に出て来るキャラクターを
AR(拡張現実)として表示するARマーカーをカードに印刷、
このカードを実際にケーキを購入した人に配るというキャンペーンでした。



このキャンペーンでは、六本木、原宿、高円寺の各店舗で
100個ずつのケーキが用意されていましたが、
朝8時に公式サイトでケーキを販売する店舗を発表したところ
11時の開店前に各店舗で全てのケーキが売り切れるという、非常事態となりました。

事例3:Webkinz
このブログでも何度も紹介している『FREE※1ですが、
この本の第9章「新しいメディアのビジネスモデル」には
Webkinz(ウェブキンズ)というおもちゃが登場します。

これは実物のぬいぐるみを購入すると、タグについたコードを入力することで
オンラインアバターのサービスが楽しめるというものです。
調べてみたところ、これはカナダのガンツ社から2005年頃に発売され、
その後アメリカを中心に大ヒットを飛ばしたとのことでした。
著者であるアンダーソンは、ウェブキンズのビジネスモデルについて
以下のように記しています。
ウェブキンズのビジネスモデルは、「無料」と「有料」をうまく組み合している。(中略) ある意味、これは二〇世紀の経済と二一世紀の経済がうまく強調した好例だ。アトム(ぬいぐるみ)にはお金がかかるが、ビット(オンラインゲーム)はタダだ。現実世界で、ほとんどの子どもはぬいぐるみにそれほど興味を持たないが、ゲームの中で全種類の動物を集めることには夢中になる。そして、バーチャルの動物を追加する唯一の方法は、ぬいぐるみを買うことなのだ。

今までの3つ以外にも事例は存在します。
例えばTopps社の野球カードやガムメーカーWrigley社のThe 5 Mixer
ロッテが2006年に展開したコアラのマーチ@メール占いは、
アトム財を購入した際にビット財を提供するというモデルです。
これらは既存の企業が自社の製品に対して新たなる付加価値をつけるため
商品をトリガーとしたビット財を提供したパターンです。
また、先日株式会社CEREVOが発売したCEREVO CAMを始めとして、
購入することでwebサービスを使えるようになる家電もありますよね。

これらの例は、アトム財とビット財を組み合わせることで
消費者のニーズ(≒売上)を最大化する
という
新しいマーケティング手法であると言えるのではないでしょうか。
ではその手法には、具体的にどのような効果があるのでしょうか。
後編では、具体的な効果と手法について論じたいと思います。※2

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※1 今年の個人的ナンバーワン。ちなみに次点は『アイデアのちから』でした。こちらも超オススメ。
※2 実は最初のエントリではこの部分も含めて一つのエントリだったのですが、友人に「面白いけど長い」という感想を貰ったため、後から分割しました。


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