2009年11月15日日曜日

書籍のデジタル化と自動翻訳で、出版市場が急拡大するという仮説

日本に向けたAmazon Kindleの発売、
対抗軸となるSONY ReaderB&Nのnookの発表など、
電子書籍/電子新聞の話題がにわかに盛り上がりを見せています。

またGoogleブック検索を巡っても様々な議論が行われ、
先月末に和解修正案に要請を提出した出版流通対策協議会を初めとして
日本の様々な団体・協会が声明を出しています。
更に欧州では既に対抗策としての書籍電子化を表明
日本でも国会図書館が電子のデジタル化に前向きな態度を見せました。

そして昨日、その流れに呼応するかのようにグーグルおよび和解関係者は
日本や欧州の出版物を除外するという旨の修正和解案を提出しました。
さて、これは日本側の勝利と言えるのでしょうか?
個人的には、少し疑問の残るところではあります。


そもそも、日本の人口は、世界から見て非常に小さいですから
書籍に限らず様々な生産物において、市場が小さいことは否めません。
それがもし、いろんな人が世界を相手に商売が出来るようになれば、
ものづくりや芸術、カルチャーを生み出すのが得意なこの国は、
もっと元気になるのではないかなんて安易に考えたりします。
例えば京都の職人が丹精込めて作った着物を、イタリアに住んでいる人に
その職人が直接売れたら、それは結構いい世界だな、と僕は思うのです。

インターネットの力を使えば、そういうことは可能になる気もします。
ただ、この記事でもちょっと触れたんですが、これには3つの壁があるのです。

1つは流通の壁
もう1つは通貨の壁
そして最後の1つが、言語の壁です。

実はこれらの壁を解消すべく、様々な企業がいま取り組みを行っています。

流通の壁は、実際に物販をしている会社にとって最も重要で難しい問題。
楽天市場は世界展開をするためにこの問題にいち早く取り組み、
楽天海外販売では、複数の商品をまとめて海外に送るサービスなども提供しています。

通貨の壁は、文字通り通貨が違うことにより決済が難しいという問題。
これは今年6月に資金決済法が可決したことにより、
PayPalを初めとした企業が日本でも展開し、解決される見込みがあります。

言語の壁は、購入ページや商品の言語が通じないことによる問題。
これはwebページを自動で翻訳してくれるGoogle翻訳のほか、
Facebookがクラウドソーシングによる翻訳機能を提供していたりもします。


さて、話を書籍に戻しましょう。

今まで、書籍を海外に販売する場合に大きなネックとなっていたのは
他の製品と変わらず「流通の壁」でした。
しかし、これがデジタル化することによって、インターネットで
データとして「配送」することが出来る為、事実上この壁が取り払われます。

また書籍などのコンテンツビジネスは、ことばそれ自体が商品であるため、
言語の壁の占める割合が大きくなってきます。
これまでは日本の本を海外で出版するためには
様々なプロセスを経なければならなかったでしょうが、
これもデジタル化で自動翻訳やクラウドソーシングでの翻訳が出来れば、
ボタン一つで海外に出版することも可能になるかもしれません。

もちろん、小説などの芸術としての書物であれば言葉にこだわるので
今の自動翻訳の精度では難しいでしょう。
しかしながらこれも、例えば出版社の中に翻訳者が居れば
海外の顧客に直接届けることは出来るようになるはずです。

書籍のデジタル化は、書物が誕生して以来の大きな変化だと言われます。
しかし個人的には、デジタル化の影響力が本当の意味で大きくなるのは
デジタル化と自動翻訳の両輪がうまく回り始めるその時だと思うのです。
必ずしもGoogleブック検索だけが回答であるとは思いませんが、
出版社は今回のブック検索関連の訴訟に片がついてからも
書籍のデジタル化について真剣に考える必要がありそうです。

0 件のコメント:

コメントを投稿