2009年10月12日月曜日

素敵な交通広告の世界にようこそ

ふと、Webを巡回していたら、とっても素敵でワクワクする動画を見つけた。


これは、地下鉄の階段をピアノ調にしてセンサーを取り付けることで踏むと音が鳴るようにし、「興味を引くことで階段を使う人を増やせるか」というテーマで実験を行ったもの。
結果として、通常より66%多い人がエスカレーターではなく階段を利用したとのこと。

この企画自体はフォルクスワーゲンが仕掛けたものだそうだが、こういった「日常の中にドキドキを仕込む」というアイデアは割と大好き

優れた交通広告や交通アートは、ルーチン化された日々の日常をちょっと刺激的にしてドキドキをくれる。
例えば、暗記しておくとなにかと便利なプチ公式まとめによると、1日の通勤時間が往復2時間なら、年間で500時間をこのルーチンワークに充てていることになる。

今さら言うまでもないが、音楽を聴いたり、読書をしたり、ゲームをしたり、勉強をしたり。
あるいは電車のラッシュに歯を喰いしばって必死に戦っていたり。
この固定化された時間をどう快適に過ごすかというのは人生の中でも割と大きな命題と言ってもいいんじゃなかろうか。

というわけでちょっと話がズレたけど、今回は冒頭の素敵なアートの様にWebで見かけた「日常をちょっとドキドキで刺激的なものにしてくれる」素敵な事例をいくつか紹介したいと思う。

■Cafe Folgers in NYC


アメリカのFolgersというコーヒーブランドの広告。
ちょっと馴染みが薄い人にはわかりにくいかもしれないけど、冬場なんかのマンホールの蓋から出てくる湯気をコーヒーの湯気に見立てている広告。
「単に湯気が出ているだけのマンホール」だと見向きもしないのに対して、「コーヒーから湯気が出ている」ことに対してはみんな注視する点が面白い。

マンホールの湯気といった見過ごしがちなアイデアをインサイトにして、日常の中にちょっとした非日常を溶け込ませる。
割と素直にオっと思わせる秀逸な作品だが、惜しむらくは「何の企業の広告かわかりにくい」という点。

注視した人と、自社製品のコーヒーとの導線をどう結びつけるかとか色々見ていて妄想が膨らんでくる。
ひょっとしたら全然関係ない近くの売店でコーヒーとホットドッグを買って満足して終わりかもね。


■McDonald's : FREE COFFEE

コーヒー続きで、こちらはマクドナルドの広告。
既存の道路照明灯を用いて安上がりに作りつつも、誰もが納得な「コーヒー」の広告。
どう発想を転がせば、道路の照明灯がコーヒーを注いでいる光景に見えるのか教えて欲しい感じだ。正にコロンブスの卵的発想。

ドナルドが笑ってMのゴールデンアーチをアピールするよりも、日常の中に異物とでもいうべき驚きで視界に飛び込んでくるこちらのほうが、広告的な効果は高い。

見ているだけでなんとなく、
「タダなら一杯よっていこうかしら。ええい、ついでにポテトも頼んでしまえ!」
という戦略に見事にはまりそうな気がする。


蛇足だけど、マクドナルドのコーヒー戦略といえば、アメリカではスターバックスより美味いなんていうレポートも出ていたり、
日本でもマクドナルドが先導を切ってファーストフードの隙間時間である14時~17時ぐらいのいわゆる「カフェタイム」の顧客やサラリーマン層を獲得するために「脱ファーストフード・入カフェ化」戦略で顧客増加を図っていたりする
(参考:狙いは「カフェ化」!? ファストフード“コーヒー戦争”の理由とは


■Shopping Curitiba's Sale (BarCode Crosswalk)

お次はちょっと変わってブラジルの横断歩道を使った広告。
横断歩道を使った広告やアート表現なんかはよく見る手法だけれども、「横断歩道をバーコードに見立てる」という発想はなかなか出そうで出てこない。

ただ、ちょっと穿って見ると、「これはどうやってアクセスすればいいんだ?」という疑問も残る。
おそらく普通に横断していては「バーコード」であることになかなか気づきにくい。
そして気づいたとしても、このバーコードを読み取るのはなかなかに大変で面倒な作業である。

興味・関心を引き付ける魅力はとても高いのに、その後の誘引が一歩足りないこの作品はそういった意味で「優れた広告」というよりは「優れたアート」といった方が正しいかも。


■Casino De Venezia

イタリアはベニス空港の広告。
上のバーコードを見たときも思ったが、こっちはもっと「うわ!すげぇ!」と感じた広告。
アトランダムに出てくるトランクの光景を、カジノのルーレットに見立てた秀逸な作品。

あー、こんな広告があったら絶対カジノ行くわ。
トランクが出てくる時間って、まだかまだかと割とイライラする時間だったりするので、そういう瞬間にこそ、こういった「発想の転換による面白さ」はクリティカルヒットすると思う。
ベルトコンベアーを赤黒に塗り替えるという単純な仕掛けだけで、他人のトランクが落ちてくる光景さえ楽しむことができる。
正に日々の日常をちょっと刺激的にしてくれる秀逸な広告。


■What Goes Around Comes Around

お次は趣向を変えて、柱広告で秀逸な作品の"What Goes Around Comes Around"。
イラク戦争反対のポスターで「報復のループ」というコンセプトを、「グルリと一周すると自分に返って来るという」柱広告の媒体特性を上手く使って表現に落とし込んだ広告。

見ると、ハッ!とさせられる心に響く広告。


■NHKテキスト「きょうの料理」放送50年記念キャンペーン

海外の事例ばっかりではアレなんで、日本の事例も。
実際に見たことはないが、JR東日本企画が行っている「交通広告グランプリ2008」のグランプリに輝いたNHKの広告。
素材は本物ではないものの、電車の吊広告に実際に調理具を用いてしまおうという反則技的な作品。

「どうすれば、媒体の持つ表現の枠を破れるか」という深遠なテーマに真っ向勝負したという意味でも割と好きな広告だったりする。


■Nike : Goals

最後はオランダのKesselsKramerという有名な面白エージェンシーが1996年に手がけたNikeの広告。
壁面に白のチョークで枠を書いたという、たったそれだけの作品。

コピーも一切なく、あるのは単に「あの」見慣れたNikeのマークだけ。
チョークだけでも自分たちのサッカー場が作れるんだよ、と訴えることで、Nikeの「Just Do It(とにかくやってみよう)」というスローガンを、とてもシンプルな形で広告に置き換えている。

シンプルイズベストのお手本の様な広告。


■終わりに
と、色々紹介してきたけれども、ここに紹介していないだけで、日本にも(というより自分のリアルな日常でも)見ると「オッ!」とワクワクしたりするような広告はたくさんある。

最近では、缶コーヒーのRootsとジャンプがコラボレーションした「Roots 飲んでゴー」キャンペーンが一番面白かったかな。

ということで、この記事を見た人で面白い広告を知っていたら、ぜひとも自分に教えてください。

2 件のコメント:

  1. 僕もハチヨン生まれなのでいつも拝見しております。

    今回紹介いただいた手法は「アンビエント広告」とも呼ばれているそうです。
    個人的に注目している手法なので、今回のエントリはかなり参考になりました。

    今後も楽しく読まさせていただきます!

    返信削除
  2. けんけんさん はじめまして
    アンビエント広告はクチコミとの親和性も高いし、なにより見ていて面白いですよねー

    自分も注目している手法なのでなにか面白い事例があったらぜひぜひ教えてください

    今後ともよろしくお願いします^^

    返信削除